北海道立三岸好太郎美術館

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こどものための三岸好太郎展鑑賞プログラム開発事業報告書

1 全体事業名

こどものための三岸好太郎展鑑賞プログラム開発事業

2 事業主体

こどものための三岸好太郎展鑑賞プログラム開発実行委員会

3 補助

文化庁「平成29年度文化芸術振興費補助金(地域の核となる美術館・歴史博物館支援事業)」

4 事業期間

平成29年4月3日~10月31日

うち主要な事業は、北海道立三岸好太郎美術館における展覧会「こどものための三岸好太郎展-つくって、発見!なぞの画家パパミギシ」会期中(平成29年7月1日~8月27日)に実施。

5 事業実施場所

北海道立三岸好太郎美術館

6 事業目的、目標、特徴

(1) 目的

本事業は、北海道立三岸好太郎美術館の所蔵品による展覧会「こどものための三岸好太郎展-つくって、発見!なぞの画家パパミギシ」(会期:平成29年7月1日~8月27日/主催・会場:北海道立三岸好太郎美術館)に合わせて、地域のこどもを対象とする鑑賞プログラムを開発するものである。

展覧会は、作品《陽子像》に描かれた三岸好太郎の長女が、早世した父であり画家である好太郎(パパミギシ)のことを知ろうとして、遺された絵の中を旅していくというストーリーに沿って展開する。展覧会場を巡るこどもたちは、いわば長女の同行者となる。

そこで、こどもたちに長女への感情移入を促すとともに、実物の絵に触発された描画・工作・記述を通して作品への理解を深め、最終的には自分なりのパパミギシ像を作り上げ表現することへと導く。そのツールや手法の開発が、この事業を構成する。

(2) 目標

北海道立三岸好太郎美術館における通常の展覧会では、大人特に高齢者の入場割合が高い。
本事業では、来館者アンケートを実施し、主対象であるこどもの入場者割合、事業内容に対する関心の度合い、保護者の事業に対する評価等について検証する。特に入場者数については、通常の所蔵品による展覧会の入場者数2,500人~3,000人を上回るとともに、こどもの入場者数の増加を目指す。

(3) 特徴

本事業の主な特徴は、「1 感情移入というこどものやわらかな心がもつ特質を、作品理解へと導いていくためのストーリー作り。」「2 こどもが実物の作品から直接に学んで創造性を高めるしかけとして、作品鑑賞とそこから触発された描画・工作・記述のためのプログラム開発。」「3 以上の1,2に、児童生徒の教育と保護者の期待等について知見の深い小学校の先生たちと、美術館学芸員が連携して取り組むことによって、内容の充実を図る。」ことにある。

7 各事業について

詳細は各リンク先を参照

8 事業の結果について(まとめ)

(1) 展覧会入場者数及びこどもの割合について

展覧会入場者数:4,285名
うち、こども:878名(幼児109、小中学生769)全体の20.5%

入場者数については、通常の所蔵品による展覧会の入場者数2,500人~3,000人を上回るとともに、こどもの入場者数の増加を目指すことを目標に設定した。

昨年度の同時期に行った所蔵品による展覧会では、入場者数が3,203名、うちこども371名(幼児31、小中学生340。全体の11.6%)であった。

したがって今年度は、入場者数が昨年度の1.3倍、うちこどもが2.4倍となっており、入場者数に関する目標は達成することができた。特にこどもの入場者数が増えたことには、今回の鑑賞プログラムの効果が大いにあったと考えられる。

(2) 鑑賞プログラム事業参加者数及び事業に対する関心の度合いについて

各事業への参加者数は、下記の通りである。

  1. 鑑賞補助イラスト:展示の一部のため未集計
  2. 鋼鉄船塗り絵:306名
  3. 触れる油彩:展示作品の一部を構成したため、未集計
  4. 感想表現:1,563名
  5. 仮面工作:299名
  6. 構図ツール:展示作品の一部を構成したため、未集計
  7. 蝶の空間:492名
  8. 人物像表現:264名
  9. ワークショップ:35名
  10. 音楽会:224名
  11. アンケート:614名
  12. 結果公開:未集計

以上 総参加者数:のべ3,183名 ※未集計を除く

上記の未集計のうち、3と6についてはアンケートにおいて利用の有無を設問に設定した。
アンケートの有効回答のうちの利用率は、それぞれ下記の通りである(いずれも有効回答数のうちのパーセンテージ)。

3. 触れる油彩:91.0%
6. 構図ツール:83.6%

以上の数字、並びに来館者と常時接する館内スタッフからの聞き取りに基づいて、事業内容に対する来館者の関心の度合いについては、以下のように考えることができる。

  • シールを貼る「感想表現」、指先で触れる「触れる油彩」、「構図ツール」は参加者が多い。その理由は、こどもだけではなく大人も参加しやすいプログラムであったことと、短時間で完結するものであったためと考えられる。   
  • それに比べて工作系、特に「仮面工作」のようなプログラムの参加者数が限られたのは、大人はあまり行わなかったことに加え、切り貼りの手間と一定の時間を要するためと推測される。
  • 「人物像表現」は、同じく自分の見解を表現する「感想表現」と比べ利用者数が少なかった。実施にあたっては、こどもが好むスタンプを取り入れるなど工夫を加えたが、遊びの要素が不足しかつ難易度が高かったものと考えられる。

(3) 事業に対する評価について

アンケートにおいて事業参加者の満足度合いを尋ねたところ、結果は以下の通りである(いずれも有効回答数のうちのパーセンテージ)。

事業内容 評価
満足 やや満足 どちらでもない やや不満 不満
(1) 鑑賞補助イラスト 65.4 21.9 9.9 1.9 0.9
(2) 鋼鉄船塗り絵 43.7 28.3 25.6 0.6 1.8
(3) 触れる油彩 65.4 23.0 11.0 0.3 0.3
(4) 感想表現 53.0 30.2 15.4 1.1 0.3
(5) 仮面工作 40.8 29.1 28.7 0.7 0.7
(6) 構図ツール 52.6 27.7 18.0 1.4 0.3
(7) 蝶の空間 47.1 26.6 24.6 1.0 0.7
(8) 人物像表現 50.2 25.8 22.8 0.2 1.0
(1)~(8) 全体について 56.9 32.1 9.6 1.2 0.2
(9) ワークショップ 100 0 0 0 0
(10) 音楽会 83.8 14.2 1.0 0 1.0
(参考) 展覧会について 63.7 30.0 5.7 0.4 0.2

 

以上から、鑑賞プログラムの評価を平均すると、「満足」と「やや満足」の合計で83.4%(満足59.9%、やや満足23.5%)となり、鑑賞プログラムの実施について来館者から高い評価を得ることができたと言える。

アンケートの自由記述においても、「子どもが楽しめた」「飽きさせない工夫がされている」「新鮮な展示」等の評価を得ることができた。 自由記述の詳細は別紙の通りである。