北海道立三岸好太郎美術館

Exhibition

コンテンツ一覧

第4期所蔵品展「ふたりの『悪童』-美術史家・外山卯三郎と好太郎」

《筆彩素描集『蝶と貝殻』より 表紙》1934(昭和9)年

  札幌に生まれ、幻想的イメージの世界を切り開いた画家・三岸好太郎(1903-1934)。その画業は、新しい表現への果敢な挑戦の連続でもありました。その挑戦に示唆を与えたと考えられる存在のひとりが、美術史家・外山卯三郎(1903‐1980)です。外山は、北海道帝国大学(現・北海道大学)予科に学び、ダダイズム的絵画を発表したり詩と創作版画の雑誌『さとぽろ』創刊に携わるなど、札幌画壇に忘れられない足跡を記しました。
 ふたりは、東京で、独立美術協会の創立会員と、同協会を支援する美術史家として出会います。『詩と詩論』に拠る詩人であると同時に、同時代のヨーロッパの画家から日本近世の円山応挙まで、幅広く視野に収める卯三郎。好太郎は、外山邸を訪ねては書斎の蔵書を読みふけったと伝えられています。
 「悪童」とは、好太郎が自らの小学生時代を振り返って自筆年譜に記した言葉です。過去のスタイルにこだわらずに作風を変えていく好太郎の姿は、他の画家からは「悪童」に見えたかもしれません。また、札幌に20世紀前衛美術の旋風を巻き起こした卯三郎もまた、北海道帝大の教授陣には手の焼ける「悪童」であったかもしれません。「新しいものに挑戦する」というスピリットにおいて、ふたりは共感しあえる存在だったのではないでしょうか。
 好太郎の代表作《筆彩素描集『蝶と貝殻』》には、外山が序文を寄せており、ふたりの親密な交友がうかがえます。好太郎と美術史家・外山卯三郎との交友を跡付けながら、代表作「蝶と貝殻」の連作へと至る画業の軌跡を、ご覧いただきます。
会期 2025.12.06(土) - 2026.03.26(木)

観覧料

観覧料:一般510(420)円、高大生250(170)円、中学生以下、65歳以上無料

*( )内は10名以上の団体料金

*高校生は毎週土曜日、学校の教育活動による観覧は無料

*生活保護を受けている方、身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方(ミライロID利用可)およびその介護者(1名)などは無料 

 

 

チラシ(悪童面).jpeg

同時開催(2026年2月23日〔月振休〕まで) mima-no-me #みまのめ VOL.11

チラシ(みまのめ面).jpeg

 札幌に生まれた画家・三岸好太郎(1903‐1934)は、20歳の年に画壇にデビューし、31歳で急逝するまでエネルギッシュな創作活動を展開した、日本近代洋画史上に残る画家のひとりです。その画業を紹介する当館では、2018年度より、北海道ゆかりの優れた若い作家を紹介するシリーズ企画「mima-no-me #みまのめ」をスタートしました。11回目になる今回は、20代と30代の作家4名を紹介します。

 理論と現実など社会を規定する物差しの食い違いとその調整の過程を、プログラミングという方法を通じて造形化し、鑑賞者と呼応して変化する映像作品を提示する石崎航琉。銅版を出発点に、筆触豊かで繊細なイメ―ジと余白を活かした余韻ある表現で、「版」の領域を静かに広げていく土岐美紗貴。愛らしいイラストレーションと並行して、動物を擬人化したオブジェと映像に取り組み、人間と「いきもの」の関係性に多面的アプローチを試みる中村紅葉。「老い」を生きる高齢者のありようや、無意識のうちに形成される他者へのかたよったまなざしなど、私たちが生きる社会に深く根差す問題を鋭敏にとらえ、造形化する森山美桜。

 いずれの作家も独自の表現を追求しながら、活躍の場を広げています。本展を通じ、若き芸術家の清新な作品をご覧いただければ幸いです。

 なお、本展は、道内の美術館がネットワークでつながり、若い作家たちへの活動の場を提供することなどにより、北海道全体がアートの舞台になることを目指す「アートギャラリー北海道」事業の一環として開催するものです。